公開研究会への参加ありがとうございました。当日の抄録を追加いたしました。
台風や地震など、事業を脅かす自然災害に備えて組織では事業継続計画(BCP)を策定しています。危機対応体制、代替継続手段、それぞれの手順などを構築、訓練していますが、
人員の交代や休憩の確保、メンタルヘルスケア、担当者のストレス管理はいかがでしょうか。
緊急事態では使える資源が限られています。少ない人数で対処するため休憩が取れない。不眠不休、長時間労働もやむを得ない。日本人特有の精神力と「火事場の〇〇力」に頼るのはどうでしょう。BCPは一旦発動すれば長期戦です。作業が数ヶ月続く場合もあります。
対策から見落とされがちな”担当者のメンタルヘルス”は、組織に影響を及ぼします。
せっかく修羅場を乗り切って事業が回復したのに、モチベーションが低下、離職、長期間のメンタル不調なども起こっています。
ストレスは、災害発生時のファーストショックだけでなく、
数ヶ月後に発生するセカンドショック(遅発疲労)があり、それぞれに対策が必要です。
今回は一般企業でも役だつメンタルヘルス対応を、自衛隊の元メンタル教官 下園壮太先生より解説していただき、参加者の質問にお答えていただく機会をつくりました。
日時: 2020年8月26日(水) 14:00-16:00
アジェンダ
14:00 オープニング レジリエンス協会 代表理事 深谷純子
14:05 災害発生時のメンタルヘルスケア ~元自衛隊メンタル教官による心のレジリエンス ~
NPO法人メンタルレスキュー協会理事長 下園壮太氏
15:00 対談 & QAタイム
16:00 閉会
下園壮太氏 プロフィール
・鹿児島出身、防衛大学卒
・特定非営利活動法人メンタルレスキュー協会理事長 同シニアインストラクター
・元・陸上自衛隊メンタル教官
・陸上自衛隊初の心理幹部として多数のカウンセリングを経験。衛生学校で、自衛隊の衛生隊員(医師、看護師、救急救命士等)に、メンタルヘルス、自殺予防、カウンセリング、コンバットストレス(惨事ストレス)コントロールを教育。
・平成12年以降、本邦初の自殺後の周囲の人々へのケア及び自殺の客観的原因分析である「自殺のアフターケア」チームのメンバーとして、約300件以上の自殺や事故にかかわる。
・平成17年には自衛隊のイラク派遣にも同行し、メンタルヘルスケアを提供。
・平成21年、産経新聞社主管の「国民の自衛官」受賞
・平成23年の東日本大震災時は、陸上自衛隊のメンタルヘルス施策に関する全般指示にかかわり、現場での指揮官等への指導を実施。
・平成27年8月 退職
出典:特定非営利活動法人メンタルレスキュー協会 https://mentalrescue.org/
講演抄録
震災や事故に限らず、失恋、パワハラ、病気などショックな出来事は日常的にもあります。多くの場合は時間が解決しますが(これを日薬(ひぐすり)と言う)、時間が経ってから起こるセカンドショックというものがあり、最初のショックより悪化することもある。このセカンドショックが起こる仕組みや対処法について、下園先生自身の現場経験をもとにお話しいただきました。被災時に働く人の一仕事終えた後のケアにも参考なります。
- セカンドショックは、自信低下、不安、自責の念 が関係している。
- 不安(将来)、焦り(今)、後悔(過去) ※カッコ内は気にしている時間
- これらを肯定する情報を偏って取り込むことで、ますますショックが増大する。
- 痛いところが悪化して、疾患を引き起こす。
- 米国の事例では、戦地から帰任してから半年後にトラブルを起こしている。
軍隊でのストレスケア4原則 PIES(パイス)
- 即時 すぐに行う
- 近接 近くで行う
- 期待 大丈夫、疲れているだけだと安心させる。
- 簡易 少し休ませる、楽にさせる
日露戦争では、不調者を戦場から遠くに離したことで、一生治らなかった例がある。体調不良であれば戦場に戻らなくて良いことから、ずっと回復しなかった。
自信と自責感のケアを重視して、PIESを参考に休ませながらも仕事をさせた方が早く回復する。うつ病で長期休職した場合は復職にもエネルギーが必要。
セカンドショック対策
- 喪に服す時のように、仲間で寄り添って話すことが大事。(初七日、四十九日の法要)
- 情報を共有し、それぞれの思いを語り、孤立を防ぐ。
- 正しいデブリーフィング。
- 孤立化は自信喪失にもつながる。
- 助けてくれる人がいない。きっと私に価値がないからだ。偏った考えを引き起こす。
- セカンドショックは荷下ろしのような感覚
- 大きな試練を乗り越えた後に起こる。
- 新型コロナが落ち着いた頃がその状態 注:今からが要注意
- 緊張感がある大きな変化は控えて、休養する。
- より少ないエネルギー消費を心掛ける。不安や怒りはエネルギーを使う。
- 誰も傷つかない物語を作る。 痛いところに触れない 。
- 過去、今、これからの物語。
- どんなことがあって、どんな対応して、これからどうするか。
- 自信を回復し、自責の念を下げる。思考の偏りを修正する。
自衛隊での考え方はOODAループ(ウーダーループ)
- Observe 観察する
- Orient 方向を合わせる
- Decide 決める
- Act 動く
- Loop 繰り返す
VUCAの時代では、PDCAよりもOODAループで行動する。